HISTORY プロゴルファー
青木功が世界マッチプレー優勝
1978年、初出場で
世界的トーナメントを初制覇
世界マッチプレー選手権は1964(昭和39)年から2014(平成26)年まで英国で開催された世界的なトーナメントである。第1回大会にはアーノルド・パーマー、ゲーリー・プレーヤー、ジャック・ニクラウスのビッグ3をはじめトッププレーヤーが集結した。その後も強豪同士の激しい戦いが繰り広げられ、初期の優勝者にはビッグ3のほかトム・ワイスコフやヘール・アーウィンらの名が並ぶ。
青木功がこの大会に初めて出場したのが1978(昭和53)年のことだ。この年は7月の全英オープンで初日、2日目と首位に立つなど上位争いを繰り広げて7位。世界に存在感を示していた。国内でも日本プロマッチプレーで初優勝を飾るなど計6勝を挙げて圧倒的大差で2年ぶり2度目の賞金王に輝いている。36歳、脂が乗って来た時期だった。
青木功の世界マッチプレー優勝を伝えた「週刊ゴルフダイジェスト」の記事
プレーヤー、フロイドを退け
マッチプレー決勝へ
会場はロンドン近郊のウェントワースクラブ。ゲーリー・プレーヤーにトム・ワトソン、セベ・バレステロス、レイ・フロイドらビッグネーム16人が出場者に名を連ねた。大会は1回戦から36ホールの長丁場である。
青木は2週間前には米国のワールドシリーズで戦い、前週は日本の太平洋クラブマスターズに出場というハードスケジュールをものともせず、1回戦でリー・エルダーを5-3で撃破する。
2回戦の相手は大会5勝を誇る南アの黒豹、プレーヤーだ。18ホールを終えた時点で濃霧のため中断となり、後半18ホールは翌日に順延。大会全体も1日延長されることになった。
前半の18ホールで6バーディーを奪い、3アップとリードしていた青木は翌日、あまり調子が出なかったが何とか踏みとどまって2-1でプレーヤーを下す金星を挙げた。
準決勝は百戦錬磨のフロイドとの対戦。フロイドは2回戦で日の出の勢いのワトソンを下して波に乗っていたが、青木はこのフロイドをも3-2で破ってみせた。
マッチプレー世界一がかかる決勝の相手はニュージーランド出身のサイモン・オーウェンとなった。欧州ツアー2勝で、この年の全英オープンでは2位に入った実力者である。この大会ではバレステロスやグラハム・マーシュらを下して勝ち上がってきた。
序盤、青木はパットが決まらず4ホールで3ダウンを喫してしまう。だが、5番以降は1ホールも奪われることなく盛り返し、13番で追いついた。さらにパー5が続く17、18番でイーグル、バーディーを決めて2アップで前半の18ホールを終えた。
後半も青木は快調なゴルフで1、4、5番を奪取。5アップにまでリードを広げた。6番でオーウェンがバーディーを奪い、久しぶりに反撃。だが、27ホール目の9番を青木がパーで取って再び5アップとした。
勝利目前となったところで意識したのか、青木は10、12番をボギーで落とす。それでも以降はパーをセーブして分けが続き、3-2で逃げ切った。
青木にとってこれが海外初勝利。世界のビッグネームが集結した大会でつかんだ頂点の座は日本のゴルフ界にとっても大きなマイルストーンとなった。
文/宮井善一
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